サールさんのワークショップが教えてくれたこと

アフリカン、と一口に言ってもその内容はさまざまであるのと同様、マリスタイル、と一口に言っても、やはりその内容はさまざまです。

今回『嗚呼バマコ 親方衆の至芸』の東京ワークショップのお手伝いを少しだけさせていただいて、その思いを新たにしました。

マリに滞在中、私が見聞きしてきたジェンベフォラは主にバレエスタイルとストリートスタイル(というネーミングが正しいかどうか分かりませんが、結婚の祝いなどのいわゆる宴のスタイル)でした。

ほとんどバマコを離れなかった為、ヴィラージュスタイル(村に伝わる伝統的なスタイル)は資料映像では見たことがありますが、直接見聴きする機会はありませんでしたし、夜の街にもほとんど出かけなかったので、ライブハウスやクラブなどでみることのできる、いわゆるパーカッションスタイルのバンドもあまり知りません。

そんなバレエスタイルとストリートスタイルに慣れた私の目と耳に、サールさんの太鼓はとても新鮮でした。知っている曲も大分違って聞こえました。
あえて分類するならばパーカッションスタイルなのかなという印象でした。
(スタイルについてはまた別稿で解説したいと思います)

f0132333_11433278.jpg
(撮影:アフリカ屋・さわこさん)

ワークショップ中、特にサールさんが強調されたことは「もっと叩け」ということでした。
参加者のみなさんは、叩きに来ているわけですから当然叩いています。
けれどもそれが彼に「聞こえてこない」。
参加者のみなさんは、最初、少なからず当惑しているように見受けられました。
「『叩け』って?叩いているけど?…」
けれどもサールさん自身が叩くことによって、彼の言う「叩け」ということがどういうことなのか、その意味が参加者にもすっとはいっていったようでした。

太鼓やダンスの世界において、マリの人と日本の人との間にある相違点を挙げるとしたら、精神と肉体の親密度、ではないかと思います。
精神と肉体、と言ってしまうと伝わりにくいかもしれません。
気持ちとからだ、と言ったらいいでしょうか。

気持ちが高揚し、がーっと行きたくなったとき、それにからだが答えてくれるかどうか。
そこのところが重要な気がします。

マリの人達は、からだが気持ちを追い越すんじゃないかと思われるほど、がーっと行くときはがーっと行く。
そう、実際、からだが気持ちを追い越しているのかもしれません。
その様は、はたで見ているだけでも高揚してくるほど、疾走感とエネルギーに満ち溢れ、その場全体にたとえようのない興奮をもたらします。

私自身も含めて、日本の人々は、日常生活の場で身体を使わないようになって久しく、からだと心の乖離が相当なところまで来ているように感じます。
心の呼びかけにからだはなかなか応えてくれないし、からだの訴えはなかなか心に伝わりません。

話が音楽からそれてしまいましたが、音楽も人の営みのひとつである以上、心とからだの問題は避けて通れない、というかそこがまず出発点なのです。
その心とからだを育むのは、文化であり、気候であり、日々の生活です。

ジェンベが日本にやってきて、今では多くの人に知られるようになり、演奏する人の数も増えています。
そういう状況下で、ジェンベのワークショップというと、「新しいフレーズを覚えたい」、「テクニックを身に付けたい」、と、とかく技術論に走りがちです。

今回のサールさんのワークショップは、参加者に、技術云々でなく「本質」にかかわる問題提起をするような、素晴らしいものだったと思います。

あなたは、本当に「叩いて」いますか?と。

参加者の方の中には、ワークの後、「やべーフレーズ全然覚えてねえー」などと思われている方もいらっしゃると思います。
もちろん、教わったフレーズをすべて覚えているに越したことはありませんが、私は(個人的に、ですが)、たとえ忘れてしまっても全然かまわない、と思っています。

それよりも大事な何かが、きっとあなたの中に残っているはずですから。

(文責:ジャバテ ミネコ)
[PR]